【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
〔 家康目線 〕
秀吉さんと話していたおかげで、もう大分薄暗くなってしまった廊下をまっすぐ歩く。
亜子の部屋の前まで来て、声をかけても反応がなくて、そっと障子を開けて中を覗くと文机に突っ伏して眠っている彼女の姿があった。
「ふっ、」
机いっぱいに広げられた薬学の本。
佐助が亜子が薬学の勉強をしてるって言っていたのは本当だったんだ。疲れて眠ってしまったのか、本を書き写していたのだろう文字が途中からふにゃふにゃになっている。
冷え込んで来ているのに、そんなに無防備に寝るなんて。
そっとその肩に羽織をかけて、
また明日会いに来ようと立ち上がった時だった。
ゆっくりと亜子の瞼が持ち上げられる。
「あ、ごめん。起こした?」
「………、」
「亜子?」
「…いえやす、さん?」
寝起きで頭が回っていないのか、いつもよりふわふわした口調で名前を呼ばれて、それが可愛くて、つい額に口づけを落とす。
それに驚いたのか、亜子の目が丸くなって、
顔が真っ赤に染まった。
「…っ、」
「顔真っ赤だよ。……、ただいま、亜子。」
「お、かえり、なさい…、」
「うん。遅くなってごめん。」
そういえば、
顔を横に振って亜子はふわりと笑った。
無事で良かったです。
そう言う亜子の顔はとても綺麗で、胸の奥から込み上げてくる何かに耐えかねて、その体を膝の上に横抱きにしてぎゅっと抱きしめた。胸の中に収まるほど小さな彼女の体温に、やっと帰ってこれたのだということを実感する。
「…城についた時、思わず亜子の姿を探した。」
「……あ、」
「女のあんたがくる場所じゃないのは分かってるけど、少し期待したんだ。仕事を終えて、やっと部屋に来ても寝てるし。」
「っ、…ごめんなさ、私、」