【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第16章 葡萄色 - ebiiro -
針子の仕事をして、
稽古や勉強をして、
秀吉さんに許可をもらったから、空いた時間があれば女中さんの仕事の手伝いをさせてもらう。
戦が始まったと聞いてからも同じで、
そうやって日々を過ごしていた時だった。
家康さんの御殿でしていたみたいに、動きやすい着物に着替えて襷掛けをして廊下の雑巾掛けをしていたら
ふと、聞こえてきた家臣の方々の話に、
心臓が嫌な音を立てる。
「…萩姫様が身篭ったという話は本当か?」
「俺も知らん。家康様はあの方を避けていた。萩姫様は、信長様との婚姻を拒むほど家康様を好いていらしたが…、噂のほどは…。」
「俺もそれは知っている。だが、あれだけ好いていらしたのだ。一度くらい色仕掛けをされていてもおかしくはないだろう?」
「ならば、城下の噂は事実か。…なにもこの家康様が戦に向かわれている時に。萩姫様も気が気ではないだろうな。」
「家康様はまだ知られていないのだろう。…戦から戻られたらすぐに婚礼の儀だな、」
「いや、まだ噂が真実と決まったわけじゃない…、」
耳を疑った。
…今の話は、一体何?
萩姫様が、家康さんの子供を妊娠した?
心臓がドクドクと音を立てる。頭の中が真っ白になってうまく話を飲み込めなかった。
ふらつきながら廊下の雑巾掛けをやめて、襷掛けを外して部屋に戻る。途中、女中さんが心配そうに声をかけてきたけれど、なんて返したかも覚えてない。
「………っ、」
必死に状況を整理しようとしても、
うまくいかなかった。