• テキストサイズ

【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第15章 濃紅 - koikurenai -







亜子と家康が、
束の間の幸せに浸っている頃。

蝋燭一本の灯りに照らされた暗い部屋の中、



「え…?今、何て言ったの?」
「はい、家康様が、」



亜子というあの女が上杉にとらわれたのを、
単独で救出に向かわれ、無事に連れ戻した、と。

そう萩姫に報告する忍びに、彼女は冷たい視線を投げかけると小さく舌打ちをした。

あの女に近づいていた喜作という男は、

あんまり役に立たなかった。だけど運良く上杉にさらわれた。そう思ったのに、家康が自ら助けに向かうなんて…。




「…とことん目障りな女。」




あの女にいくら言おうとも、

家康の気持ちが変わらなければ意味が無い。

婚姻を考える、とそう家康は言ったけど、お父様はそれでは納得しなかった。せめて戦が終わるまで待っていて欲しい、と頼み込んで少し時間はもらえたけれど、

家康はきっと、うん、とは言わない。

自分が安土にいない間に、私があの女に手出しをしないようにと時間稼ぎをしただけだろう。だから家康がいない間に、あの女を喜作にどうにかしてもらおうと思ったのにうまくはいかなかった。

こうなったら、
家康を頷かせる状況を無理矢理作るしかない。




「…仕方ないわ。安土にあの噂を広げて。」
「…っ、姫様、それは、」
「…私だって、この手は使いたくなかったわ。でも、家康が噂に気を取られている間に自分で手を打つしか…、」



もう時間が無いのよ。

縁談相手が悪いわけじゃない。お父様のいいなりになるのが、どうしても嫌なだけ。私は私が決めた相手と婚姻を結びたい。

そう言う萩姫に、
忍びは眉を寄せて苦しげな表情をしながら、



「仰せのままに。」



そう言って姿を消した。

その次の日だった。





安土中に、




『萩姫様が家康様とのお子を宿した。』




そんな噂が広まったのは。





/ 240ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp