【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第15章 濃紅 - koikurenai -
私がそう思ったのに気がついたんだろう、家康さんはさらに深いため息をつくと、
「ねえ、何か勘違いしてるでしょ。」
「…え?」
「敵だからとかじゃないよ。…俺はっ、」
「……、」
「はあ…。俺は、…他の男が選んだ着物をきてるのが、いや、な、だけ…、」
そう言われてボワッと体中が熱くなった。
言った本人の家康さんの頬も、ほんのり赤くなっていて、それがさらに恥ずかしさを増す。
「えっと、っ、」
「…っ、ちょっと今こっち見ないで。」
目と目が合えば、
その瞬間ぐいっと背けられて、天幕中に広がる甘い空気に下を向くことしか出来なかった。
昨日想いを伝えた時も恥ずかしかったけど、
いざこう、好意を目の当たりにすると、さらに恥ずかしくてどうしたらいいか分からなくなる。家康さんがこんな風にストレートに伝えてくれるなんて思ってなかったから、
余計に。
「…亜子、」
「は、い…、」
「あんた、ちょっとは自覚したら。」
「…え、何を、」
…自分が思っている以上に可愛いってこと。
その言葉が、急に抱きしめられたせいでダイレクトに耳に響く。早くなる鼓動は、きっと、家康さんにも伝わってしまっているだろう。
こんな風に甘い空気には慣れていなくて。
それに家康さんには、その素っ気ない態度に最初嫌われてるとばかり思っていたから、少し前からの優しく甘い彼の態度にどうしてもドギマギしてしまう。
「…ふっ、顔真っ赤。」
「それ、は、」
吐息がかかるほど近い距離で話しかけられて、心臓が飛び出していきそうだ。
彼の親指が優しく私の唇を撫でて、
ふわり、
そのまま唇が重なった。
息が止まる。
何度も啄ばむように唇が重なって、
部屋中に甘ったるい空気が溢れ出して、
耐えきれなくなりそうなその時、
チュッ
とかわいらしい音を立てて唇が離れた。
「…ふっ、これ以上したら止まらなくなりそうだからやめとく。」
「…ッ、」
「でも、また暫く合えないから、」
「…え?」
暫くこうさせて、
そう言って力強く抱きしめられて、それに応えるように私も彼の背に手を回した。