【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第15章 濃紅 - koikurenai -
「君も迷ってるんだな…、」
「…うん。ごめんね、佐助くん…この前は帰るって言ったのに。」
「いや、気にしないで。そう簡単に決められることじゃない。俺だって迷ってるんだ。」
「……前は帰りたいとばかり思ってたのに、」
難しいね、
そういう私に佐助くんは少し困ったように笑った。
「そういえば、佐助くん。…家康さんに私が未来から来たこと伝えてくれたんだね。」
「…勝手に話してしまってすまない。君を助けるために、俺との関係を彼に伝えるには本当のことを話すしかないと思ったんだ。」
「ううん、いいの。ありがとう。佐助くんが言ってくれなかったら、きっと私ずっと本当のこと言えないままだったと思うから。」
「…信じてもらえた?」
「…まだ半信半疑だと思うけど、」
「そうか。あの日一緒に話を聞いた幸村は全く信じてない。家康さんはすごく理解力がある人なんだな。」
幸村が信じないのは想定内だったけど、
そういう佐助くんに思わず笑ってしまった。この話を聞いて素直に何もかも信じてくれる人の方がおかしいよ、そう言うと佐助くんも少しだけ笑みを浮かべる。
家康さんも、信じてくれているというよりは、
そんなこと関係ないとでも言うように、私を丸ごと受け止めてくれている感じだった。
すごくすごく、優しいと思う。
「…いや、こんな話をしている時間はないんだった。」
急に我に返ったように話す佐助くん。
また風が木々の間を通り抜けてザワザワと音を立てた。
「ワームホールの予兆が広がり始めてる。」
「…え、」
「まだ不安定だから断言は出来ないけど…。おそらくこの一ヶ月以内に発生するだろう。」
「…ッ、」
「発生場所を観測でき次第すぐに君に知らせる。」
その場所に近づきさえしなければ、巻き込まれることはないだろう。でも同時に現代に帰る道はもうない、と思った方が良い。
そう言われて息をのんだ。
私はその時、どんな選択をするんだろうか。
今の私の脳裏に浮かぶのは、
家康さんの顔ばかりだった。