【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第15章 濃紅 - koikurenai -
〔 亜子目線 〕
あかね色に染まる空は、どこまでも高く続く。
家康さんに軍議が始まった天幕から出して貰って、一体どれくらいの時間がたっただろう。一つ戦が終わったと思ったら、また次の戦。いつか未来に訪れるはずの平和を手に入れるためには、仕方の無いことなのかもしれない。
でも、私には、
刀を手に取る理由はやっぱり理解が出来ない。
彼らには、戦わなければいけない理由があるのは分かってても、どうしても他に方法はないのかなとそう思ってしまうから。
「…はあ。」
言い表す事のできない気持ちをごまかすように、
小さくため息をつく。
その時、
「…亜子さん、」
名前を呼ばれて振り返ると、
さっきまで天幕にいたはずの佐助くんがすぐ側にいた。
「少し時間ある?」
敵同士の俺たちが一緒にいるのを見られるのはまずいから、出来るだけ手短に済ませる。
その言葉に小さく頷いて、
彼に手を引かれるまま、
人気の無い野原までやってきた。
「…軍議に参加しなくて良いの?」
「ああ。俺は武士じゃなくて忍者だから。」
「そ、っか。」
「…それより、大事な話がある。」
…ワームホールの事だ。
佐助くんのその言葉に応えるように木々の間を、風が激しく通り抜ける。
「この前、君は現代に帰りたいと言った。」
「…うん。」
「その気持ちは変わらない?」
「……ッ、」
その問いに、うん、とは答えられなかった。
現代には家族がいる。デザイナーの夢だってやっとかなえたばかりだった。それに、ここみたいに戦もなければ、明日命をなくすかもしれないといった緊張感もない。でも、この数ヶ月間でここにもお世話になった人はたくさんいる。
…それに、現代に家康さんはいない。
つい昨日想いが通じあったばっかりで、
側にいて欲しい
とそう言ってくれた。
でも、本当に私が側にいてもいいのか不安でもある。後ろ盾もなければ、素性も分からない、そんな私に彼の隣にいる資格があるのかと。実際に萩姫様に言われた言葉が、重く私にのしかかってくる。
でも、わがままかもしれないけど彼の側にいたい。
でも、
でも、
でも…。
このジレンマは、
永遠に続いて私には一つの道を選べそうもない。