【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第15章 濃紅 - koikurenai -
「…まさかとは思うけど、これを渡すためにこの子の出席を条件にしたの。」
「いや、ただ顔をみるためだ。」
「へえ、そうういうこと。…なら、やっぱりあの時切っておくんだったかな。」
「俺は今からやり直しても構わんぞ。」
その予想があたったことに腹が立つ。
一応亜子が織田家のゆかりの姫で、
信長様の妾ではなかったことを協定の話とともに伝えたのが仇になったか。
でもまさか、あの牢に閉じ込められている間だけでこの子が敵の武将に気に入られているなんて思ってもみなかったんだ。
思わず立ち上がる俺と上杉の間に、
口元を黒い布で覆った忍びが立ちはだかる。
「謙信様。今日は協定にいらしたことをお忘れにならないで下さい。それに彼女が怖がっています。」
その声にハッとした俺たちは、
静かに目線をそらし座る。
その様子を眺めていた信長様は、突然大笑いし始めた。三成と亜子は、きょとんとしたまま顔を見合わせている。
「…亜子、貴様とんだ悪女だな。」
「………え?」
「自覚がない、か。恐ろしい女だ。」
信長様の大笑いのせいで、すっかり空気の変わった天幕に
上杉の鋭い声が響いた。