【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第14章 薄桜 - usuzakura -
「亜子の生きる時代や帰る場所はここじゃないかもしれない。」
「………ッ、」
「弱いのに一人で頑張るあんたは、戦の絶えないこんな時代より平和な世で生きている方が似合うかもしれない。帰りたいと、そう思うんでしょ?」
「それ、は、…」
否定できなくて口を噤むと、
そんな私をみて少し困ったように笑った家康さんは、少し黙って聞いていてと、私を諭した。
「俺は徳川家の当主だ。
譲れない物や守らなきゃならないものがある。流れる血が少ないに超したことはないけれど、俺も敵もそうしないと守りたいものを守ることが出来ない。
だから大切なものや守るべきものは、少ないに超したことはないと思ってた。なのに、いつの間にかあんたのこと守らなきゃ、と思ってた。
気づいた時にはもう大切だったんだ。
もし、あんたが平和な世に帰れるなら、それに超したことはないかもしれない。待ってる人もいるだろうし。でも、
側にいて欲しいと、
この手で守らせて欲しいと、
そう思わずにはいられない。
それくらいあんたのことが好きなんだ。」
家康さんがそう話す間、私はずっと泣いていた。
話し終わった彼が私の顔をのぞき込んで、
そっと涙をぬぐってくれる。あきれたようにほほえむ彼に、涙でぐしゃぐしゃな顔を見られて恥ずかしいとか、そんなこと思っている暇もなかった。
伝えられる想いを受け止めるのに精一杯だったから。
言葉を発する事すら出来ないくらい泣く私を、
家康さんは何も言わずに待ってくれて。
しばらくしてようやく私が落ち着くと、
「…亜子はどうなの?」
そう優しく問いかけてきた。