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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第14章 薄桜 - usuzakura -





うまく言えなくて、

静まりかえった空気にザワザワと風がなる。その時、家康さんが発した言葉に、私は目を丸くした。



「俺はあんたに帰って欲しくないと思ってる。」
「…え?」



思わず聞き返すと、
すぐ側に家康さんの真剣な顔が近づいてきて、その翡翠色の瞳から目を離すことが出来なかった。



「500年後は戦もない平和な世だって佐助に聞いた。」
「………、」
「こんなに怖い思いもしないだろうし、そっちの世にはあんたの事心配してる両親だっているんでしょ?」
「…は、い、」
「こんな馬鹿みたいな話、信じたくなんて無い。でも、あんたの言うことは信じたい。それに、俺にとって重要なのは、」



亜子が、側にいることだから。



そう言われて、また、涙があふれる。



「ちょっと、何回泣くの…、」
「…なん、で、」
「…なんでって、言わなきゃ分かんない?」
「っ、」



次々とこぼれ落ちる涙を、家康さんの指が優しくぬぐってくれる。その指先があまりにも優しすぎて、暖かくてさらに涙があふれた。



「俺にしては分かりやすく伝えていたつもりだったけど、」
「……ふっ、」
「ほんと、泣きすぎ。」



1回しか言わないから、よく聞いてなよ。

そう言われて近づく顔に、心臓が止まりそうになって、息をすることも忘れたまま静かに涙を流した。耳元にそっと寄せられた唇から、





「…あんたのことが好きだよ。」





そう紡がれた言葉。



それを私の頭が理解するより早く、家康さんの腕の中につつまれていた。きっと、私の返事なんて想いなんて彼にはバレバレだったんだろう。

家康さんは、胸に顔を埋めて泣き続ける私の頭をなでながら、いつもより何倍も優しい声で話してくれた。




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