【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第14章 薄桜 - usuzakura -
本当は騙すつもりはなかった、とか
いつ話そうか迷っていた、とか
言い訳がましいことは言わない。
「佐助君に聞いたなら、私が話すよりうまく説明してくれてると思います。」
「いいよ。それでも。」
「え………、」
「あんたの言葉できかないと信じられないから。」
そうまっすぐ見つめ返してくれる家康さんの瞳に背中を押されて、私は今まで話せなかったことをゆっくり話し始めた。
「私は500年後の世界の人間です。」
あの、本能寺の変の夜。
私は、旅行で本能寺の跡地を訪れていたんです。でも私にもよく分からないけど、時空の歪みに飲み込まれて、気がついたらこの時代にいました。腰に刀を携えている人を見て、夢か何かの催しでもしているのかと思ったくらいです。
でも顔をたたいても、意識を失っても、
夢から覚めることはなかった。
あの夜、現実を受け止められなくて、森に逃げた際に運良く佐助君に出会いました。同じ時代から来た彼がいたから
現実を受け止める事が出来たんです。
「でも、私には時を超える理論も、仕組みも説明出来ません。それに、信じて貰えるとも思わなかった。」
だから、
秀吉さんに疑われて、どうしようかと悩んでるうちに、記憶を失った事で話が進んで、正直助かったと思ってしまった。着物の着方も、字の書き方も分からなければ、自分の素性もうまく言えない。
嘘をつく罪悪感はあったけど、
本当のことをうまく説明出来ないなら、その方がいいと思ってしまいました。だから嘘に嘘を重ねて、
今ここにいます。
「すみません…。」
「…いや、いい。あの場でこの話をされても、確かに俺は、馬鹿げた話だと信じなかっただろうから。」
「………。」
「信じられない話だけど、」
…信じてくれるんですか?
そう問いかけようとしてやめた。だって、私は今嘘をついていたと告白したばかりなのに、そんな女の言うことをそう簡単に信じてくれるわけがないと、
…そう思ったから。