【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第14章 薄桜 - usuzakura -
池の水が、
沈みかかった夕日を反射する。
徐々に冷たくなる風が、
私と家康さんの間を通り抜けて。
やっぱり先に口を開いたのは、家康さんの方だった。
「…亜子。」
「はい。」
「聞きたいことが、二つある。」
「……はい。」
問いかけている家康さんの目は、どこか真剣で、その空気に私も緊張してうなずいた。
「一つ目は、上杉の事。」
「…。」
「思い出したくないなら、言わなくていい。…上杉にそんなにひどい扱いうけてたの?」
「え…?」
熱がすごく高かったから、
そういう家康さんに私は慌てて首を振った。
確かに牢屋に入れられてはいたけど、私は想像するようなひどい扱いを受けてない。武田信玄も、謙信様もなんだかんだと不思議なくらいよくしてくれていた。
結局袖を通すことはなかったけど、
あの上質な着物も布団も。
人質とは思えないくらい、
「…よくしてくれたんです。」
「じゃあ、なんで、」
「自分の責任です。言うことを聞かずに薄い着物一つで、牢の中で過ごしていましたから。」
「…。」
「謙信様は、薬も栄養になりそうな食事も与えてくれました。人質らしい扱いといえば、牢に入れられていたことくらいです。」
「…そう。」
腑に落ちないという顔をした家康さんに、
私も曖昧に笑って見せた。
だって私にも分からないから。何で、人質の私の面倒をあそこまで見てくれたのか、いくら考えて見ても答えは見つからない。
「…でも、亜子がとらわれたことには変わりない。」
「……そう、ですね。」
「この話はおしまい。」
「はい。」