【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第14章 薄桜 - usuzakura -
信長様が出て行った後まだ少し怠い体を横にしたらいつの間にか眠ってしまっていた。ここは、戦のために張られた陣営で、すぐそばで戦があることなんて考えられないくらい疲れ切っていたから。
夕刻。
天幕の隙間から差し込む夕日で目が覚めた。
「…ふぁ、」
寝過ぎて体が重たい。
でも、頭はだいぶん軽くなったと思う。
少し風に当たりたくて天幕の外に出たら、見張りの兵に中に戻るように言われる。それでも少しだけ、とお願いをして歩き出したその時、
「何やってんの、」
前方からあきれた顔をした家康さんが近づいてきた。
「…病み上がりなんだから、」
「でも、…外の空気を吸いたくなって、」
「はぁ、」
「すみません、」
深くため息を漏らす家康さんに、謝ってすごすごと中に戻ろうとすると、
少しだけだよ、
そう言って私の手をとって外へと連れ出してくれた。
捕まれている腕に急に熱が集まるのを感じる。
そんな私に、家康さんは気がつかないまま進んでいって、しばらくして、池の側までやってくると足を止めた。
家康さんは私の方を振り返ると、目を丸くする。
「ちょ、亜子…、顔赤い。」
「…ッ、」
「熱ぶり返した?…ごめん、すぐに、」
「ちがっ、…その、腕が、」
熱がぶりかえしたのかと慌てて帰ろうとする家康さんに、私も慌ててしまう。私の言葉で、つかんだままの腕に気づいたのか、
家康さんはバツが悪そうな顔をして、
そっと腕が放された。
その離れた体温が少し恋しくなって、目で追ってしまう。今朝も感じたこの少し気恥ずかしい雰囲気に、二人で黙りこくってしまう。