【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第14章 薄桜 - usuzakura -
喜作さんの件も、私がもっとしっかり断っていたら良かったし、私が警戒して城下の端っこになんて行かなかったらこんなことにはならなかったかもしれない。
全部何もかも、
タイミングが悪かっただけ。
「…謝るのは私の方です。」
「だから、」
「助けに来て下さって嬉しかったです。でも、怪我、させてしまってすみません。」
「……っ、」
白い頬に残る切り傷。
傷は見えないけれど包帯が巻かれている腕。
どれも、私が原因でできた傷で、
きっと痛いはずなのに、家康さんはまるで痛いなんて素振りも見せずに私を助けて、そしてここまで連れて帰ってくれた。
思わず、そっとその腕に触れる。
息を詰めた家康さんに、
痛かったのかと、ハッとして手を離すと、真っ赤に染まった家康さんの顔が間近にあって。
「すみませ、」
「…怪我なんてたいしたことない。」
「…は、い、」
「あんたのせい、なんかじゃないから。」
その近さに、固まったまま動けなくなる。まるで金縛りに遭ったみたいに、瞬き一つ出来なくて、私たちの周りだけ時が止まったみたいだった。
どれくらい見つめ合っていただろう。
先に静けさを破ったのは、彼の方だった。
「……信長様を呼んでくる。」
「は、い、」
あんたが目を覚ましたら呼ぶように言われてるから。そこで、大人しく待ってて。
そう言って家康さんは何事もなかったかのように天幕を出て行く。取り残された私は、さっきの不思議な空気の余韻に浸って動けなかった。