【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第14章 薄桜 - usuzakura -
怠い体を起こしてあたりを眺める。
昨日、一日家康さんに抱えられるようにして馬に乗っていたのはなんとなく覚えているから、ここは織田軍の天幕の中なんだろうか。
そう思い、立ち上がって外に出ようとすると、
「…亜子、起きたの。」
中に家康さんが入ってきて、まだ寝てなきゃ、と敷かれた毛布の上に戻される。
「…すみません、」
「あのね、…何回謝るわけ。」
「…そんなに謝ってましたか?」
「覚えてないの?…まあ、すごい熱だったから仕方がないかもしれないけど。」
私が大人しく毛布の上に戻ったのを確認すると、家康さんはてきぱきと薬の準備をしてくれる。そういえば、初めて会ったときも私に薬を飲ませてくれたな、なんて思い出しながら家康さんをみていると、
くるり
と振り返った彼に顔をのぞき込まれて目を丸くする。
「…熱は下がったみたいだね。でも念のため、薬は飲んでいて。」
「……はい、ありがとうございます。」
「…別に。礼はいらない。謝るのは俺の方だから。」
「え?」
そういう家康さんに、訳が分からなくなる。
そう思ったのが伝わったのだろう。家康さんは苦々しく顔をゆがめると、ゆっくりと話し始めた。
「連れ去られる原因を作ったのは俺だ。」
「…そんなこと、」
「…俺の御殿に来た日、城下で声をかけてきた男のこと覚えてる?」
「はい、」
「あの男は喜作の父親だった。俺があいつに、あんたのことを“織田家ゆかりの姫だ”なんて紹介したから、喜作があんたに拘ることになった。きっと喜作があんたに言い寄ってなかったら、もし上杉の忍びに出会っても光秀さんの忍びがあんたを守れたから。」
「それは違います。…喜作さんがいるのに城の外に出て油断していた私が悪いんです。」
家康さんは悪くない。