【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第13章 瓶覗 - kamenozoki -
慎重に馬に乗り、
亜子をしっかり胸に抱えると、
「佐助に謝らないといけないことがある。」
そういって、向き直った。
胸の中にいる亜子も心配そうに佐助を見てる。
「…上杉を切った。」
「………っ、」
「亜子を助けるためには仕方なかった。傷は深くはないはずだ。…でも、佐助、お前にとってはたった一人の主君だ。すまない。」
「…はい。」
苦しげな表情をする佐助、
その横で少し怒りを滲ませる真田。
二人を見て、申し訳なさそうな顔をする亜子をもう一度強く抱え直す。
「急いで城に戻ります。亜子さん、また。」
「もう戦に巻き込まれるなよ。」
そう亜子に告げると、二人は、春日山城に向かって走り出した。
この子も少し上杉の事が心配なんだろう。あいつらのせいで、自分がさらわれて怖い思いをして、しかも体調を崩すことになったのに…、この子のこういうところが好きだけど、
心配でたまらなくなる。
「…少し飛ばす。体調悪くなったらすぐ言って。」
「分かりました…、」
「つらかったら、寝てていい。」
「…はい、」
手綱を持って馬を走らせる。
馬がどんどん勢いを上げていくなか、しっかりと腕に力をいれて名前の体を支える。すると突然後ろを振り返った彼女にどうしたのかと慌てると、
亜子は熱で火照った顔をふわり、とゆるめ、
「…助けに来て下さって、ありがとうございます。」
そう言って笑って、
前を向いた。
この体制で良かったと思う。きっと赤くなっている顔は彼女には見せられない。胸にあふれる愛しい気持ちに、息がつまる。
しばらくして、すうすうと聞こえてきた吐息に少し安心しながら、陣営への道を急いだ。