【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第13章 瓶覗 - kamenozoki -
織田軍の陣営に着いたのは、
翌日の夜だった。
熱もあって、だだでさえ体力が落ちている亜子が長時間馬に揺られ続けるのに耐えられるはずもなく、今はくたりと眠っている。
「家康様!」
「…静かにして、三成。」
「…すみません、嬉しくてつい。亜子様はっ、」
「熱が高い。今は眠ってる。この子のために天幕を一つ準備して。」
「かしこまりました…、」
嬉しそうに駆け寄ってきた三成にそう指示すると、家臣を呼び寄せ、すぐに天幕が用意される。その中に亜子を寝かせると、薬を煎じに外に出る。
そのすぐ横に待ち構えていたのは信長様だ。
その姿を確認するいなや、頭に落とされた拳に頭を抱える。
「…いっ、」
「貴様は、無茶しかできんのか。」
「いきなり何なんですか。」
「亜子を助け出したのは褒めてやる。だが、その袖に付いている血は何だ?」
「………別にたいしたことありません。」
そういうと、もう一発頭に拳が落とされて、
それで満足したのか、
信長様は颯爽と自分の天幕に姿の消した。
信長様は、本気で怒ってないことは分かってる。きっとあの人は、出陣の知らせを聞いたら俺が飛び出していくことを想定していたはずだ。だからこそ、こちらに向かいゆっくりと前進してきたのだろう。俺が見つからないように、時間稼ぎをしてくれた三成と信長様には感謝してる。
でも、
「殴ることないだろ…、」
そうつぶやいた。