【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第13章 瓶覗 - kamenozoki -
〔 家康目線 〕
亜子を抱きかかえたまま、佐助に教えられた抜け道を走る。春日山城を抜け、城下町の外れまで行くと、ゆっくり亜子を地面に下ろした。
「…いえやすさ、」
「うん。…ここまで来れば追っ手も来ないはずだ。安心して。」
「……、ごめんなさ、い、」
「なんで謝るの。あんたは悪くないでしょ。」
「でも、…、」
熱があるからか亜子の顔はいつもより赤い。
その熱を持った手が、
俺の頬にある切り傷、そして腕の傷のある場所をゆっくりとなでるから、心臓が痛いくらい早く鳴る。亜子の目は、今にもこぼれ落ちそうなくらい涙をためていて、必死に謝る彼女に、思わず口づけをしてしまいそうになった。
そんな自分に心の中でため息を付く。
「もう謝るな。それより、亜子。」
「…はい。」
「熱が、」
あるでしょ、
とそう言いかけたとき、荒い息をしていた彼女の体がぐらりと揺れる。咄嗟に抱き留めたけど、その体はさっきよりも熱が上がっていて、
「…すみません、」
「だから、謝らなくていい。」
また謝り始める彼女をなだめた。
そしてそのまま、また亜子を抱き抱えて林の中に紛れる。揺れると余計に悪化するかもしれないから、しばらく歩いて木々の間を進むと、少し開けた場所に佐助と真田が馬を連れて待っていた。
「亜子さん、家康さん、」
「…え、」
「二人を待ってました。この馬に乗っていってください。」
「…この借りはいつか返す。」
「いらねーよ。こいつを助けたかったのは俺らも同じだ。早く行け。」
荒い息を繰り返しながら、
状況をよく飲み込めてない彼女に、二人が手を貸してくれたことを伝えると、熱でしんどいはずなのに、二人に笑顔を向けて礼を言っていた。