【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第13章 瓶覗 - kamenozoki -
「質問は一つと言っただろう。」
「……ッ、」
「まあ良い。それはここに連れてきたときに言ったはずだ。早く戦がしたい、とな。戦をするのに、俺には込み入った事情はない。ただ戦がすきなのだ。」
「…ゴホッ、」
「戦火の中を駆け抜けている時は、自分が生きていると実感することが出来る。俺が戦をするのは、それだけの理由だ。」
そう話す謙信様の目がどこか悲しげにゆれているのを感じて、余計にこの人が分からなくなった。
ただ戦をするために私を人質にして、
それなのに
私が牢の中で死なないようにと気にかけてくれる。
私はもしかすると時が来ればこの人に殺されるのかもしれない。でも、その悲しげな表情になんとも言えない気持ちになった。
「…女にこのような話をするのではなかったな。」
「……ゴホッゴホッ、」
「風邪がひどくなる前に着替えて寝ろ。」
そう言って謙信様は牢の中から出て行く。
廊下の先はもう真っ暗だ。
いつのまにかすっかり夜になってしまったのだろう。
牢の鍵をかけようと、謙信様がしゃがんだその時、
ゆらり
暗闇がゆれた。
それにすぐ気づいた謙信様は、
顔を上げて、その整った顔をゆがめる。私からその人影は見えないけれど、がらりとその場の空気が変わったことには気がついた。
「…ほう、どうやって入った。」
「さあね、…亜子は返してもらうよ。」
冷たくなった謙信様の声、
その後に聞こえてきた声に、ハッと息をのむ。
この場所から聞こえるはずのない声。
聞きたいと思ってしまっていた声。
胸の奥が熱くなって、
声も出せないまま、その人を見つめる。
「…いえや、す、さん、」
やっと絞り出したその声を拾った彼は、私の姿をちらりと確認すると、腰の刀を抜いて、
まっすぐ謙信様に向けた。
「まさか、越後の龍自らが亜子の番をしてるとは思わなかった。…待ってて、今そこから出してあげる。」
「…この俺に勝つ気でいるのか?笑わせてくれる。」
「言ってろ、人さらい。」
ゆらりと立ち上がった謙信様も、まっすぐに家康さんに刀の先を向ける。
夜の闇の中、白光りする刀の先は怪しく危なげだ。牢の中いっぱいに広がる緊張感に、息をすることも出来なくて、ただ熱のこもる怠い体を持ち上げると、