【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第13章 瓶覗 - kamenozoki -
「…ゴホッ、私は、敵国の者です。」
「………だからなんだ、」
「放っておいて風邪をひいても、あなたには何の関係もありません。」
「では、ここで風邪をひき凍え死ぬというのか?」
「…何故、死ぬことになるのですか?」
私が死ぬのは、
どちらかといえば、
目の前のこの人の手にかけられる時だと思う。
人質としての役割を終えた時か、信長様の命と引き換えにか、分からないけど、風邪で死ぬより殺される方が可能性が高いと、
そう思う。
…人質として連れてきたのは自分なのに、何故私が死ぬことをこんなに心配してくれているんだろう。
分からない…、
「風邪などで死ぬつもりはありません。」
私を殺すかもしれない
上杉謙信。
でも、彼も武田信玄も、本当に悪い人ではなくて、恐ろしいとは思えない。だから余計に、
何故、どうして、
という気持ちが消えない。
何故、こんなにも
信長様たちと睨み合っているのか、
分からない。
「…まあよい。また来る。それから、」
「……ゴホッ、」
「上杉様とは呼ぶな、謙信と呼べ。上杉では誰を呼んでいるか分からん。」
それだけ言い残して、
彼は牢の先の道へと姿を消した。