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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第13章 瓶覗 - kamenozoki -


〔 家康目線 〕



「…え?」
「…それは、本当ですか?」



亜子が上杉に攫われた。
事の経緯を聞き、激しい怒りが胸奥を焼き尽くす。

最後に見た彼女の顔は、泣き顔だった。

涙には気づかないフリをして。あの柔らかい笑顔は、戦から帰ってきた時のご褒美にと、思って。涙を拭ってやることもしないままここにいる。



「…くそっ、」



早々に戦さを終わらしたい。

そんなことばかりを考えていたからバチでも当たったのかもしれない。思わず拳を握りめて呟いた言葉は、思った以上に掠れて、怒りが滲み出ていた。

隣にいる三成の



「…敵の誘いに乗ることはできませんね。」



いつもどおり落ち着いた口調に

益々怒りが募る。



「…いちいち言わなくていい。」
「誘いにのって進軍するのは、織田軍にとってかなりの不利…国境の領土問題ではすまず、大きな戦になります。」
「わかってるって言ってるのが、聞こえないのか。その先は言わなくていい。」
「………。」



…亜子の救出に向かうのは織田軍にとって不利、

そんなの言われなくてもわかる。

あの子一人のために、軍を動かすわけにはいかない。俺たちを迎え撃つ準備が整っているからこその挑発だ。

…最善策はどれだ?
あの子を無事に救い出す方法は?

無言で考え込んでいたら、天幕の中に伝令が飛び込んできた。



「家康様、三成様っ、」



信長様が軍を率いて、ゆっくりとこちらに向けて安土を発たれたとのことです!

その言葉に二人で顔を見合わせる。

…信長様が向かってきてる。流石に春日山に乗り込んでいくつもりは無いだろう。だからこれは、敵を油断させるための策。

それなら、



「…俺が一人で春日山に乗り込む。」



亜子を助け出すにはそれしかない。

春日山に乗り込んだとして、戦に勝とうが負けようが、亜子は敵に囚われたままだ。盾にされて、1番に殺される可能性が高い。

信長様が敵を少しでも油断させているその間に、亜子を探し出し連れ戻す。

それが、きっと最善策だ。



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