【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第13章 瓶覗 - kamenozoki -
「今は何処にいる。」
「…出すわけにはいかないと思い、そのまま牢で様子を見ております。」
「…仕方ない。俺も様子を見に行くとしよう。」
それに加えて、姫、ときた。
あのような粗末な牢で耐え切れるはずがなかったか。そう考え、牢に上質な褥と煎じ薬を運び込むように指示を出す。
くたり、
牢の床に倒れこんだ女は、うっすら開けられた瞳に俺の姿を写すと、フッと表情を消した。真っ直ぐ睨むように見つめて来る女に、口を開きかけたその時、信玄が着物を抱えて牢へとやって来た。
「…お、珍しい客だな。」
「信玄、お前、ここに何をしに来た?」
「何って、姫が倒れたと聞いて来たまでだ。…昨日もひどく咳き込んでたからな。」
「…お前……、余計なことはするなといっただろう。」
軽く眉を持ち上げてとぼけた信玄は、
浅い呼吸を繰り返す女に羽織を被せた。
「……ゴホッ、」
「ほら、言うことを聞かないからだ。大人しく着ておきなさい。」
「…すみません、」
「謝る必要はない。姫を閉じ込めているのは俺たちなんだから。」
こいつの女好きはもはや病気だ、
チラッと俺を見て言う信玄に深くため息をついた。
確かにこの牢に閉じ込めてしまっている手前、面倒をみなければならないだろう。俺ももう少し様子を見に来るとしよう。
人質に牢の中で死なれては不愉快だ。
「…それを着て薬を飲め。」
「……、」
「死なれてはかなわんが、ここからは出してやれん。逃げ出しても安土まで行き着く前に事切れるだろう、戦が終わるまではそこにいろ。」
「………、」
バタバタとやってきた女中たちが、
その女に薬を飲ませ、粥を食べさせるのを見守ってから牢を後にした。