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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第12章 深紫 - fukamurasaki -





重たい瞼を開けた。

背中に感じる冷たく硬い床の感触。ズキズキと痛む頭を抱えて、ゆっくりと体を起こす。



「……ここは、」



何処だろう。

ただ、目の前にそびえる木の柵にここが牢屋であることだけははっきりと分かる。床は畳のようになっていて、イメージする刑務所の牢屋とは全然違う。でも遮断されたこの部屋は確実に牢屋だ…。

そう認識した時、


優雅に着物を翻した男の人が、遮られた向こうの廊下からやって来た。



「…起きたか、」



…私は、この人を見たことがある。

冷たくて、何故かいうことを聞かないといけないと思うような、信長様とはまた違った種類の圧倒的なオーラを持った彼。



「……っ上杉、けんし、ん、」
「ほう。俺の名を知っているか。」



佐助くんの雇い主。
織田軍の敵。

絞り出した声は、ひどくかすれていた。



「お前には戦の切り札になってもらう。」
「…ぇ?」
「今頃信長は文を読んだ頃だろう。…お前の妾を預かるとそういった文を渡しておいたからな。」
「……めかけ、」
「何だ。娘の方が正解だったか?まあ、どちらでもいい。じきにわかるだろう。」



…お前の存在が使えなければ別の手を打つまでだ。早々に戦を始めなければ、退屈で死んでしまうからな。



「…そこで大人しくしていろ。」



上杉謙信は、

そう言い残して去っていった。



一人取り残された牢の中。ガンガンと痛む頭で必死に考える。彼は、私を“信長の妾”とそう呼んだ…。何故、とか、そんなことはどうでもいい。


信長様が私一人を助けるために来るとは思えない。

それでももし、本当に戦の火種になったら?
たくさんの命が失われるんだろうか…。

もし、私が使えなかったら?
私は今後どうなるんだろう。


私の頭でそんなことを考えても答えなんて見つからない。どうしようと膝をかかえて丸くなる。

その時、



片方の耳が軽いことに気づく。



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