【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
秀吉さんに教えてもらった城下町の橋の茶屋。そこで二人で話しながら、美味しい羊羹を食べて、帰りに綺麗な反物を買って帰ろうと、
そう思って、
勘定を済ませて立ち上がった時、
ザザッ
と店の前の道が砂埃をあげる。
警戒心を解きすぎたのかも知れない。
私と雪ちゃんを見つめて歩み寄ってくる男たち。その中心には喜作さんがいて、雪ちゃんが私を庇うように背に隠した。
「…またお会いできましたね、亜子様。」
「亜子様に何か御用ですか?」
「……ただ逢瀬に誘おうと思っているだけですよ。」
「…それにしては物騒ですね。」
「普通に誘っても断られそうなので奥の手を、と思いましてね。」
笑みを絶やさずに雪ちゃんと対峙する喜作さん。
雪ちゃんの影から顔を出そうとしても、彼女はサッと動いて私を庇い続ける。
「…さあ、亜子様、私とお話ししましょう。」
優しげな人。
でもそれが君悪さを倍増させている。
雪ちゃんの背越しに舐めるような視線を感じて、何故城を出たんだろうと、後悔が止まらない。私と雪ちゃんとでは、この大勢の男の人たちに勝てるわけがないから。
「雪ちゃん…、」
「亜子様大丈夫です。後ろに隠れていて下さい。」
「何が大丈夫なのですか?ここは穏便に済ませたい…それに、女二人で男に敵うとでも?」
「…それはどうでしょうか?」
諦めて私が行く、
そう言おうと思った。茶屋の主人も心配そうに私たちを眺めている。人が集まりだしたら大変。
それなのに雪ちゃんは私を背に隠したまま、
今度は不敵に笑った。
「…ッ、」
喜作さんが息を飲むと、サッと、彼らを囲むように人が現れる。その瞬間に、雪ちゃんに腕を掴まれて、林の中に逃げ込んだ。あまりにも突然の出来事で、私は彼女に手を引かれるまま必至に走る。
林の奥、
木々が避けて出来ている小さな空間まで来ると、雪ちゃんは申し訳なさそうに私を見ていた。