【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
「早く部屋に入れ。」
「はい。」
「それと、 いつまでも城に篭っているな。城下の方が気が紛れるのだろう?…喜作もこの俺の足元で悪さをするほど馬鹿ではないだろう。貴様は自由にしておれ。」
「…はい。」
信長様には、
きっと私の心の奥までお見通しなんだろう。
底知れない女なのに、
その力強い眼差しに守られているみたい。
「…おやすみなさい、信長様。」
「ああ。」
布団の暖かさが、冷え切った身体を温めてくれる。
次の日、
私は信長様に言われた通り城下に出た。
家康さんが戦に向かった事で、余計に、今度は無事を祈る事で部屋に篭ってしまいそうだったから。気を紛らわす、じゃないけど、いつも通りの生活をしていよう、とそう思って。
それでも、喜作さんに会うのが少し怖くて、
『ご一緒致しましょうか?』
そう提案してくれた雪ちゃんに、素直に頷いて二人で城を出た。それが良かったのか、ただ出会わなかっただけなのか、信長様の言うとおりなのか分からないけれど、その日は、喜作さんに会うことはなかった。
だから、安心しきっていた。
家康さんが戦に行って3日目、開戦の知らせが届く。
5日目、戦の状況の知らせとともに、
「家康様の先日のお怪我が開いたようです。」
「…ほう。やはりまだ治っていなかったか。」
「はい。ですが、まるでお怪我を感じさせない気迫で前へと進まれており、戦は優勢で御座います。」
「分かった。」
信長様の元にこんな知らせが届いていたこと、
それで、三成くんが急いで戦に向かった事、私は知らなくて、
その日も雪ちゃんと二人で城を出ていた。