【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
でも、今日の信長様は、なんだかいつもより優しい気がして、思わず、問いかけてしまった。
「信長様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「いいだろう。」
「…信長様は、
私がこの時代の人間ではない、そう言ったら
どうしますか?」
私のその質問に、信長様は、
「ハッ、何を考えているのか知らんが、前にも言っただろう。貴様は俺に幸運を運ぶ女だと。」
そう答えた。
そう言われて思い出したのは、この城に来た日の事。
広間で武将たちを囲まれて、記憶を無くしたのかという問いに答えられない私を見て、信長様は、
『…俺は貴様を気に入った。狐に憑かれていようが、貴様が敵の女だろうが、幸運を運ぶことに違いない。記憶があるのかないのか知らんが、此処で俺に幸運運び好きに暮らすがいい。』
と。
そして今日もまた、幸運を運ぶ女、と、そう言ってくれている。
「この時代の人間でなくともそれは変わらん。」
もし、私がほんとうにこの時代の人ではないと告げた時、信長様が私の言葉を信じるか信じないか。記憶を失っている、と騙していたことを許してくれるか、それは分からない。でも、彼のその言葉に、
私はすごく救われた気がした。
どんな人間でもこの城に居場所がある、
そんな気がして。