【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
〔 名前目線 〕
家康さんが戦に向かう前日。
ここ最近は、バタバタと忙しそうに駆け回る家臣や女中の姿が見えて、落ち着かない。昼間は城の書庫に篭り夜は星を眺める…、
喜作さんの顔がチラついて、城下町に出る気にもなれなくて、ただ、
そうやって毎日を過ごしていた。
「亜子様。お勉強ですか?」
「三成くん…、」
「こんな所で会えるとは思いませんでした。」
「うん。三成くんはどうしてここに…?」
だから、三成くんに会うのもすごく久しぶり。
女中さん達から、三成くんも家康さんのすぐ後を追って戦に向かうことは聞いていて、彼も忙しくしているみたいだったから、数日間姿を見ることすらなかった。
「はい。少し戦地の地形を調べておこうと思いまして。」
「…そっか、」
「亜子様が読まれているのは…薬学書、ですか?」
「うん。難しくて読むのにすごく時間がかかっちゃうんだけどね。」
そう言って苦笑いする私に、
三成くんは、頑張りすぎないでくださいね、と言って書庫の奥方に行ってしまった。いつもの彼なら、きっともう少し他愛のない話をしてくれるのに、やっぱりとても忙しいんだろう。
私がこの時代に来てから、
戦というものが身近に起きるのは初めて。
戦の前は毎回、城の中もこんなに慌ただしく緊迫した雰囲気になるんだろうか。帰ってくるのを待ってる間も、…ずっと?
「…はあ、」
胸がもやもやして
苦しくて、
ずっと気を張り詰めている。
何かしてないと落ち着かなくて、着物を仕立てたり、勉強をしたり、飽きるくらいそうしてるのに、その間も胸の奥に違和感がある。
無事に終わった、
その知らせがあるまでこの違和感は取れそうもない。