【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
「…亜子には手を出させないで下さい。」
…守らないと、
弱くて儚くて消えてしまいそうな亜子。
弱いものは嫌いなはずなのに、興味もないはずなのにいつのまにかあの子から目が離せなくなっていた。
ふわふわと笑う笑顔が見たくて、
泣き顔が見たくなくて、
不安そうな顔が見たくなくていい、
周りの環境に馴染もうと努力するその姿や、自分より人のことを心配してるところ、決定的な何かは無いけど、弱くても必死に生きていこうとしている彼女が輝いて見えて。
蛍のように儚い光が、
俺の心を照らしてくれた気がした。
この手で守りたい。守らなきゃいけない。
そう思う女に出会ったのは初めてで、こんなことになるならとっとと思いを告げておけばよかった。
秀吉さんに任せるのは癪だけど、
「よろしくお願いします…、」
そう言って家康は頭を下げた。
まず、自分がすることは戦に勝つことだ。あの子にあんなに心配そうな顔をさせておくわけにはいかない。
すぐ目の前に優先事項がある時、
人はその足元や、大事なものの側に影が忍び寄っていることに気がつかない。それはどの時代の人も同じだ。いくら気をつけていようとも、見落としてしまうことはある。
家康は、
女の恐ろしさ
その影を、
亜子は、
男の執着心
その影を見落としていて、
その影と影の間を、敵の影が忍び寄ってきていることには、さらに気付けるはずもなかった。