【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第12章 深紫 - fukamurasaki -
「…何ですか、こんなに朝早くから。」
忙しいんですけど、
そういう家康の顔は、何時もの何倍も不機嫌で、秀吉はそれを分かりながらも、ちょっとな、と濁す。
「…本当に何の用ですか、秀吉さん。」
「昨日、…萩姫は来たか?」
「………来ましたよ。」
「そうか…。なら一応言っておく。」
光秀から聞いた話だが萩姫と喜作が繋がってる。
「あいつが言うんだから間違いないだろう。」
「…そうみたいですね。」
「驚かないのか?」
「…昨日、萩姫に取引を持ちかけられました。」
家康はギリっと奥歯を噛みしめながら
昨日の夜のことを思い出す。
萩姫は喜作のことを知っていた。それでいて、自分が萩姫を正室に迎え入れるなら、亜子に手を出さないと言ったから、二人の間に何らかの繋がりがあるのは確かだ。
そう秀吉に告げると、彼は眉を寄せる。
「俺がいない間だけでもとそう思って、とりあえず考える、と返事をしました。」
「そうか…、」
「…しばらくは手を出してこないでしょう。」
「直接は、な。あいつには時間がない…。」
切羽詰まった状態だから手札は全部使うだろう、
そう言う秀吉に今度は家康が眉を潜める番だった。時間がない、とはどういう事だろうか、何を言っているのか、そんな顔をしている彼に、秀吉はやっぱり知らなかったかとため息をつく。
家康は萩姫を毛嫌いしてるから、
どうでもいい、
こんなことになるとは思わずに、どうでもいいとそう思って情報を遮断していたんだろう。
「…萩姫に縁談の話が出てる。」
秀吉の口から出た話は、
家康の知らないことだらけだった。
「萩姫の父親がとって来た縁談だ。
織田傘下の中でも格式の高い武家の当主。だが、この話が出た頃から、あいつはお前に執着し始めた。
…最初はただの恋心から、だろう。
あいつはずっとお前を好いてた。…家康も気づいていただろ?でも、相手にしなかった。それを知っていた父親は無理だと萩姫を諭し、縁談の話を進めようとした。だが、萩姫は頑なに拒んだ。
それは、」
お前へへの恋心からだけじゃない。