【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「申し訳ありません…。」
私が萩姫様の忍びに構っている間に、萩姫様は亜子様に接触。…そして喜作という男も近づいたようです。
そう頭を下げる雪の姿を見て、
光秀、そして信長はニヤリと笑った。
「過ぎたことは仕方あるまい。」
「亜子は萩姫のことは何も言わなかったか?」
「…はい。接触したのは間違いありませんが、亜子様は何も…。」
「大方、家康のことを何か言われたのだろう。」
それにしても、
喜作という男は頭が足りないようだな、と、楽しそうに喉を鳴らす光秀。
「…既に萩姫様と喜作殿の関係を探っております。」
「フッ、頼むぞ。」
「…お任せください。」
「亜子の様子も逐一報告せよ。今後は城下に降りる際は、貴様同行しろ。影から見守るのではなく、な。」
「畏まりました。」
ハッと、頭を下げると、襖の向こうに消える雪。
その姿を見送った後、光秀と信長は眉を寄せ合った。
萩姫はだんだん手段を選ばなくなってきている。それは彼女に残された時間が少ないからだ、ということを信長と光秀は知っていた。
「…家康にこのことを伝えますか?」
「いや、放っておけ。」
亜子と萩姫が接触したのは、今頃萩姫づてにでも聞いているところだろう。あの女は亜子のことを利用して家康に取り入るはずだ。
…萩姫は小細工は得意だからな。
今度は信長が喉を鳴らして笑う番だった。
「フッ、彼奴が今までうだうだとしているからこうなったのだ。時間がない分萩姫も必死だ。」
家康が自分でなんとかすべき問題だ。
人の恋路に口を挟むのは野暮というものだろう、と、ニヤリと口をあげる信長を見て、光秀もふっと口元を緩めた。
自分も手を貸す気はさらさらないが、秀吉あたりにこの話をしておいてやるか…。あのお人好しは手を貸してやるかも知れん。家康にも、だれか頼る相手が必要だろうからな。
そう思った光秀は、
信長に一礼をすると、部屋を後にする。
それを見送った信長は、一人酒を嗜みながら亜子の顔を思い浮かべていた。