【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「…お前に、亜子のことは関係ない。」
「あるわ。家康があの子を大事に思うなら尚更ね。」
「………、」
「…喜作、だったかしら?あの子のことを慕っている男が城下をうろついてるみたいね。」
「…亜子に手は出すな。」
「ふふ、」
家康が、私を正室にしてくれるっていうなら、
考えてあげる。
「…ッ、」
息を飲んだ俺に、萩姫は不敵に笑った。
これ以上、亜子に手を出させるわけにはいかない。
萩姫があの子に会って何を言ったか分からないけど、喜作の話まで知っているんだ…。裏で何か仕掛けているに違いない。
…俺が安土にいない間は特に危険だ。
せめて、その間だけでも、
「…分かった。考える。…だから、俺が戦に出てる間は城に戻れ。」
…萩姫と亜子を引き離さないと。
そう思って、萩姫にそう答えた。萩姫は、満足そうに笑って、「絶対勝って帰ってきてね。いい返事と一緒に大人しく待ってるわ。」そう言って、御殿を去って行った。
「…ッ、クソ、」
萩姫を諦めさせることが出来なかった俺のせいだ。
後悔が押し寄せて、思わず漏らした声は、夜の闇に飲み込まれて行った。
でも、既に、
不穏な影は俺のすぐそばまで伸びていて、
亜子の姿はその陰に包まれてしまっていた。