【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「…何しにきた。」
「家康を待ってたの。ねえ、そろそろ私を正室にする気になった?」
「………何度きても一緒。俺はお前を迎え入れる気はさらさらない。生まれ変わってもそれは変わらない。」
「…そう。」
自信に満ち溢れたその顔。
上質な着物で着飾っているその姿。
いくら迫られようと、俺が萩姫を受け入れることなんてない。そう、思って萩姫の顔をギロリと睨みつける。
でも今日の萩姫はいつもと違った。
いや、…今日の萩姫は、いつも俺の前で被っている猫の皮を剥ぎ、素の姿だった。
「…ねえ、家康。知ってる?」
「……何。」
「織田家ゆかりの姫の亜子様…、」
だから、油断していた。
案外あっさり引いてくれる、そう思ったから。
萩姫の口から出てきた亜子の名に、俺の瞳が少しだけ揺れたことを、萩姫は見逃さなかった。
「ふふ、その様子じゃ知ってるみたいね。」
「…何が言いたい。」
「彼女、本当の姫じゃないんでしょう?…何処の誰だか素性の分からない女。なのに何故かみんな彼女を守ろうとしてるみたい、ね。」
「…汚いね。忍びを使って調べるなんて。」
俺の口から出る辛辣な言葉にも、
萩姫は笑顔を崩さず、俺を見つめ続ける。
「信長様、光秀…そして家康まで彼女を守ろうとしてる。ねえ、あの子が好きなの?」
「…お前には関係ない。」
「関係あるわっ!…家康、目を覚まして。あの子は本当の姫じゃないのよ?」
「……俺は寝ぼけてないんかないよ。帰れ。」
「嫌よ!いい?家康。貴方は徳川家の当主なの。由緒正しい家柄の娘を嫁にするべきよ。貴方が良くても周りが反対するわ。」
…彼女はそう言ったら納得してくれたっ!
萩姫のその取り乱した叫びに、
俺はハッと息を飲む。
亜子が納得した?
…萩姫が、亜子と会った?
いつから、亜子のことを調べていた?
「…萩姫ッ、」
「……そんなに動揺するなんて、思わなかったわ。」
あの子のことそんなに大事なの?
怒りを抑えきれなくて、こいつの名前を呼べば、俺のその声に落ち着いたのか、悔しそうに口元をゆがめた萩姫。
その問いには反応しなかったのに、