【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
〔 家康目線 〕
星で溢れる夜空の下。
懐から辛子色の巾着を取り出すと、中身を覗く。
「……ッ、」
小さな丸い入れ物と、紙きれ。
そして、ハギレで作ったのだろう小さい御守り…。生地も柄にも見覚えがある。きっと、これは、俺が亜子にあげた反物…。
「…っなんてことしてくれるの、」
戦に行くのが決まってから数日しか経ってない。
きっと話を聞いてから慌てて作ってくれたんだろう。でも巾着も御守りも丁寧に仕上げてあって、それに心がざわついた。
丸い入れ物には、軟膏が入っていて、
紙切れに拙い文字で使い方と成分が書かれていた。亜子の文字は見たことが無いけど、でもきっとこの拙い字は彼女のものだろう。三成に教えてもらい、字の勉強をしてたし。
「…薬、高いのに、」
…軟膏なんて自分で作ればいい。
亜子は、俺が薬を作れるのしらないか…、
でも、わざわざ城下で買わなくても…、針子の仕事でいくら貰ってるかは知らないけど…。あの子は一体俺のためにいくら使ったんだ。
「…ほんと、バカ。」
きっと、戦に向かうと聞いて心配しているだろう、
そう思って今日彼女を訪ねた。
案の定、口には出さないけど、心配でたまらないといった表情をする名前をどうにか元気付けたくて、自分でも恥ずかしいくらい甘い声を出した気がする。
少し触れた肩や頭から伝わる体温に
我慢ができそうになくて、
亜子の涙には気づかないフリをして、部屋を後にした。あの柔らかい笑顔は、戦から帰ってきた時のご褒美にとっておこう、そう思って。
亜子の顔を思い浮かべ、
渡された辛子色の巾着を懐にしまい直しながら御殿の門をくぐると、
そこに萩姫の姿があり一瞬で心が冷めていく。