【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「…本当に急に開く可能性もある。」
「…うん、」
「君は、なるべくこの城にいて。その方が俺も見つけ出しやすい。」
「…分かった。」
それから…
「…家康さんが向かう戦に、俺も行く。」
「………え?」
「彼の戦の相手は上杉軍だ。俺も手伝いをしに行かなくちゃならない。」
「…っ、」
「だからしばらく安土を離れる。でも、心配しないで、何かあればすぐここにかけつけるから。」
君はここで安全にしてて。
そういう佐助くんの言葉に、私は、この人が現代仲間である前に、敵側の忍びだって事を思い知らされた。
心配するな、
そう言われたって心配せずにはいられない。
女であること以前に、私はこの時代の戦というものそのものをあまり理解できていないから。だから、不安でどうしようもなくて、
ただ願うことしかできない。
「…佐助くん、これ持って行って、」
まさか、佐助くんが戦に行くなんて思わないから、
何も用意は出来ていないけど、
「…これは?」
「切り傷に塗る薬。…効き目はよく分からないけど…その、私が作ったから。」
「君が?」
「…うん。少ないけど持って行って。」
文机の上に置いていた軟膏を彼に渡す。
丸い木の箱に入れた軟膏は、独学で学んだ知識を元に作ったものだから効き目がいいとは言えないけど、せめてもの気持ち。
「…あの巾着の中身はこれか、」
「えっ?」
「いや、何でもない。じゃあ、行くよ。」
「…気をつけてね。」
ああ、ありがとう、
そう短く告げた佐助くんは、天井裏へと姿を消した。
一人残された部屋で、
私は無事を祈って待つことしか出来ない歯がゆさを噛み締めていた。