【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
「…私次ワームホールが開いたら現代に帰りたい。」
「……でも君は、家康さんが、」
「ふふっ、さっきのでやっぱりバレちゃったよね…。ねえ、佐助くん。佐助くんは謙信様?に自分のことどう説明しているの?」
「…自分の話はあまりしていない。」
謙信様は義理堅い人だ。
俺が彼の命を救った後、謙信様は何か礼をすると言ってくれた。彼は俺を気に入ってくれて、行くところがない、そう言ったら、無償で城においてくれることになった。忍びになれたのも、謙信様のおかげだ。
彼はあまり過去に興味がない人だから、
俺のことについて質問はしてこない。
「そっか、私はね。嘘、ついてるの。」
「…亜子さん、」
「成り行きで記憶を失ったことになってる。信じてもらえないだろうからって、そのままにしたの。」
「…それは、俺も見たから、…知ってる。」
「…そう。…今になってね、それがすごく苦しくて。嘘をついてしまった手前、嘘に嘘を重ねて行くしかないの。みんなとてもいい人なのに…、私は彼らを騙してる。」
それに、身分のはっきりしているこの時代。
彼と結ばれる未来はない。
「この時代にお世話になった人は沢山いるし、その人たちに申し訳ないけど…。私はやっぱり、現代は捨てられない。両親も、友達も。」
だから、次もし開くなら現代に帰る。
そう言い切ると、
佐助くんは少しだけその無表情を崩して、切なそうに笑った。
「そうか、君の気持ちはわかった。」
「…佐助くんは、どうするの?」
「俺は…もう少し悩むよ。まだワームホールの出現についても不確定だ。…君も気持ちが変わったら、また俺に言って。」
「……うん。」
私の不安で揺れている心の内を知ってか、知らずにか分からないけど、優しくそう言ってくれる佐助くんに、
今度はちゃんと笑いかえせた。
「ワームホールの観測は続けているけど、」
…先日大きくなった予兆が小さくなってなくなったと思ったら、また現れて大きくなったり。予測しにくい動きをしている。いつ本格的に広がるかは、
今のところ不確定だ。