【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第11章 路考茶 - rokoucha -
心臓が嫌な音で鳴っている。
ドクッドクッ
と、まるで私の持ち物じゃないみたいに。
家康さんと、どうにかなりたいわけじゃなかった。
ただ、それでも、
名前を呼ばれた日、
耳飾りをもらった日、
名前を呼んだ日…。
どこか甘いあの空気に期待していたのも事実で。
萩姫様の言葉が胸に突き刺さって外れない。
…素性の分からない女。
偽りの姫。
私の本当の話を彼らに告げたら、どういう反応をするだろう。こんな夢みたいな話、信じてもらえるかな。
「…信じてくれるわけない、か。」
家康さんは、
萩姫様と結婚するんだろうか。
彼は嫌いみたいだったけど、萩姫様はきっと家康さんのことが大好きで、彼女ならきっと徳川家にとっていい縁談相手なんだろう。
…またワームホールが開くなら
やっぱり私は現代に帰ってしまおう。
その方がきっとこの気持ちを殺すには丁度いい。
それならこの布は、最初で最後の彼に贈るプレゼントになる。
もう少しいい布を買えばよかった…。
そう後悔しながらも、路地の角を曲がると、そこに待ち構えていた男に腕を掴まれた。