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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第10章 紺鼠 - konnezu -





「全員、そろったな。」


羽織を翻し、信長が広間へと入ってきた。上座に腰を下ろすと、悠然と腕組みする。



「家康、貴様から報告しろ。」

「はい。…光秀さんと俺で、先日捕まえた今川の残党を尋問したところ、奴らが亜子を攫おうとした目的を吐きました。やはり目的は、亜子を誘拐し、交換条件に信長様と安土の外へ引きずり出すことだったようです。」

「亜子が信長様の寵愛をうけてるって情報をどんな経路で入手したんだ?」

「奴らの裏に厄介な黒幕がついていて…そいつが情報を流したそうです。…本願寺、顕如。
顕如は、信長様と亜子が視察に行った時、側で様子を伺っていたようです。その時は、罠だとわかり手は出してきませんでしたが…、」

「信長様に楯突いた、元、一向宗の僧、ですか。寺を取り潰され敗走したと聞いていましたが。」

「生き延びて復讐を目論んでいたようだ。今川の残党からはもっと面白い話も聞けたぞ。信長様を、京の本能寺で襲った賊は、顕如の一派だと。」

「…今川の奴らは、途中で俺に出会い私怨に駆られ、顕如とは手を切ったようです。」



家康が皮肉な口調で告げ、話を終える。

信長はその話を顔色ひとつ変えずに聞き、ククッと喉の奥を鳴らした。頭の悪い今川の奴らは置いておき、顕如は次の一手を考えている頃だろう。



「次の報告を。」

「はっ、」



天下統一への道のりが平坦だとは思ってない。

道は自分で切り開き、そして繋いでいくものだ。理想とする世を作る為、その為の障害なら乗り越えられるというもの。

ギラつく武将たちの顔を見下ろしながら、信長はそう考えた。




「監視していた上杉謙信の根城…春日山に潜らせていた間者から報告があった。越後の龍と甲斐の虎。たしかにこの目で認めたってな。」

「話は終わりじゃない。昨夜、報告が入った直後、越後との堺、織田軍の領土の端を守る支城が攻めこまれた。」

「…裏で謙信が手を引いている、ということか。」

「そういうことだ。今、攻防の最中だが…、戦力を追加投入されて、こっちの支城を奪われたら、その勢いで深く攻め込んでくるだろう。」

「その前に潰す必要がある、という事ですね。」



その言葉に一番に反応したのは、

普段ならあまり先陣を切っていくことはない家康だった。



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