【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第10章 紺鼠 - konnezu -
亜子が秀吉の御殿に着いた頃、
安土城の広間には、
信長と光秀、そして喜作の姿があった。
「…彼奴は貴様には会わん。」
「何故、でしょう。」
「フッ、己の心に聞いてみろ。貴様のような男、俺が女でも会いたいとは思えん。」
「…姫様があって下さらないなら、自ら探し出すまでで御座います。」
「好きにしろ。ただ覚えておけ。」
…貴様の軽い口や過ぎた行動は災いを呼ぶ。
そう信長に告げられた喜作は、グッと拳を握りしめ広間を後にした。喜作がいなくなり、残った光秀は信長に問いかける。
「良いのですか?」
「構わん。彼奴に構ってる暇は無い。」
「…信長様は、喜作が何故亜子に拘っているかご存知ですか?」
「知っておる。」
大名たちの間で広まっている噂。
最初は『織田家ゆかりの姫は大層麗しいらしい』そういった内容だったのが、紆余曲折を経て何故か、
実はその姫は信長の隠し子で、容姿端麗な彼女は、城の中で蝶よ花よと育てられている
というものに変わってきていた。
それを信じる者、信じない者どちらも居るが、喜作のはそれを信じているのだろう。亜子に拘るのはその為だ。信長の娘であれば、婚姻を結べば織田家とより深い関係になれる。
「亜子を利用したいのだろうな。」
喜作とその父の噂はよく耳に入る。
あの親子は口が軽い。そして思慮も浅い。
最近傘下に入ったばかりのため、より注意深く観察されて居るとは知らず、あちこちでその口の軽さを披露しているのだ。聞きたくなくても話は自然と耳に入ってくる。
「…だが、先ず解決しなければならぬ問題は他だ。明日、早朝から軍議を開く。他の奴らに伝えておけ。」
「…畏まりました。」