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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第10章 紺鼠 - konnezu -






「萩姫様、」
「…家康は今日も帰らないのね。」
「…はい、そのようです。もうすぐお父上様とのお約束の日まで半月をきります、どうなさいますか?」
「私は絶対に諦めないわ。それより、あの女の情報は掴めた?」
「…それが、」



城の警備は固く、また、あの方の周りには明智様の忍びまで配置されています。

そう、自分が抱えている忍びの報告を聞き、萩姫はフッと口元をゆがめた。家康の御殿に秀吉たちときていた女。それだけでも目障りなのに、織田軍の武将たちはあの女の情報が漏れないように守っている。

…何か臭うのよ。



「…しかし、名前だけはわかりました。」



…亜子様と仰るようです。

それを聞いて、萩姫の顔はさらに歪む。



「それだけ分かれば十分よ。城の内部から情報を得られないなら外を探せばいい。」
「…では、」
「ええ。織田家の血筋を辿りなさい。ゆかりの姫なら何処かで見つかるはずよ。出生や家柄、全て調べて。」



萩姫はそう指示を出すと、闇に姿をくらます忍びを見送って懐の中から一通の文を取り出した。

『 私にはもう心に決めた方がおります。』

そう綴られた文の宛名は彼女の兄の一之助。



「…心に決めた方、ねえ。」



その相手が誰かなんて関係ない。

もしその相手が家康だった時のために、彼に近づく女は排除しとかなければならない。



家康の正妻になれなければ私は…、



手にした文をギュッと握りしめ、萩姫は宿への道を歩いた。



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