【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第10章 紺鼠 - konnezu -
〔 家康目線 〕
「……お前、また来たのか、」
「………。」
「いい加減諦めて側室にでも迎えてやればいいんじゃねえか?」
「…政宗さんがそうすればいいじゃないですか。」
「遠慮する。」
俺はあの手の女は苦手なんだ。
そう言って眉を寄せる政宗さんに、俺もですよ、とため息を吐く。
復帰してから俺は毎日、秀吉さん、光秀さん、政宗さんの御殿を転々として泊めてもらっている。1日だけど御殿に泊めて、それから追い出したはずなのに、何故か毎日萩姫は御殿に押しかけて来る。
…とっとと俺を諦めてくれたらいいのに。
「はあ、」
「ため息ばっかりだと幸せが逃げるぞ。」
「…無理言わないでください。御殿に帰らなくていいように仕事も詰めてるんです。」
「遠方の仕事ばかりやってるらしいな。」
「…城にいると萩姫が来る。」
「それで城にもあまり寄り付かないんだな。」
萩姫が何故こんなにも俺に拘るか、
その理由が分かったら、
あいつから解放されることが出来るんだろうか。一度だけ本人に理由を聞いて見たけど、黙り込んで教えてはくれなかった。
俺は、
自分で決めた相手としか、
婚姻を結ぶなんてしたくない。
徳川家の当主として血筋を絶やさないためには、こんなことを言うのはおかしいんだろう。最近、愛はなくても子を作るのが当主としての務めだと、年配の家臣たちは口をうるさくして言って来るようになった。
「…あんなに腹黒いやつ、」
たとえ誰に何と言われようと、
萩姫とだけは婚姻を結びたくない。
「フッ、そうやってうだうだやっていると、誰かに亜子を掻っ攫われるぞ。」
…は?
「…どうして亜子が出て来るんです、」
「しらばっくれるな。」
「………、」
「お前が、城に寄り付かない間に、アイツ結構面倒なことになってるぞ。」
その言葉にガタンと反応すると、
政宗さんは面白そうに笑い出した。バレているとは思っていたからどうってことないけど腹がたつ。ひとしきり笑われて、笑いがやっと治ったところで、亜子に起きていることを教えてくれた。