【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第2章 月白 - geppaku -
「ご苦労、佐助。信長は生き延びたのだな。」
「はい。」
「相変わらず悪運の強い男だ。」
「……。」
忍者の報告を受けて、さっきまでの和気あいあいとした雰囲気が変わる。ここにいる人たちは、きっと、
上杉謙信と武田信玄。
私は彼らがどんな存在で何をした人なのかはわからないけれど、名前は知ってる。この二人と一緒にいるんだから、幸と呼ばれる彼もきっと武将なのだろう。
そして、この雰囲気だと、織田信長の敵…。
そこまで察して、緊迫した空気のなか、口も聞けないでいると、不意に、忍者の目が私に向けられた。
「君…!」
「え?」
「偶然行き合っただけの女だが、知り合いか?」
「…いえ、なんでもありません。迷い子のようですね。俺が里へ送っていきます。」
短く告げた後、忍者は私の手をそっと掴んで歩き出す。どういうことか分からなくて、混乱する私を森の奥へ連れ込むと、忍者は顔を覆う装束を取り払った。
「俺の顔に見覚えはない?」
「…あ、」
「あなたは…、」
あの時本能寺の跡地にいた…、
「覚えてくれていてよかった。」
「あなたもタイムスリップしてきたの?!」
「順をおって説明するよ。俺の名前は佐助。」
混乱する私に、彼はこれまでの出来事をゆっくりと語り始めた。