【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
雪と萩姫の忍びが対峙してる間に、
亜子はあの甘味屋に向かった。
既にそこにいた佐助と信玄の姿を見て足を早める。
「…佐助くん!」
「亜子さん、元気そうでよかった。」
いつもと変わらない無表情で、
ホッと息を吐く佐助くん。連絡出来なくてごめんなさい、と謝ると、少し表情を和らげて笑ってくれた。
「やあ、姫。」
「……っ、あの、こんにちは、」
「そんなに警戒しないでくれ。可愛い子にそんなに避けられては悲しいからな。」
「…えっと、」
すると横からするりと手を取られて、
また硬直してしまう。
この人の雰囲気にはいつまで経っても慣れないだろう。私に向かって吐かれる言葉はとても甘ったるい。
「…信玄様、亜子さんが困っています。」
「困った顔も愛らしい。どうだ、姫。このまま俺に攫われてみないか?」
「……ッ、」
グッと近づいた顔に驚く。
武田信玄。
私のことを姫って呼んでいるけれど、その心理は分からない。私のことを安土城にいる姫だと知っているなら、今の発言はとても危険だ、とそう思い慌てて離れようとすると、
誰かが、後ろから私の肩をグッと掴み彼から離してくれた。
「邪魔するな、幸。」
「…あんたのその女好きは病気ですね、」
振り返ると真紅の着物が目に入る。
「…あ、すみません、幸さん、」
「っ、幸さんって気持ちわりーな。幸でいい。敬語もやめろ。」
「…え?ぁ、はい。」
そう言って彼は、私の肩を離すと、武田信玄の腕を掴み引っ張って行く。
「今日こそ帰って頂きます。」
「はいはい、分かってるさ。姫の顔も見れたし、俺は帰るとするよ。じゃあ、また、姫。次会った時は君を攫う。」
わーわーと言いながら、
武田信玄と幸は行ってしまって、その二人の後ろ姿を眺めながらポカンとしていると、気にしなくていい、そう佐助くんが言う。