【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
「雪ちゃん、私城下町に行ってくるね。」
「…ご一緒いたしましょうか?」
「ううん、大丈夫。この前見れなかった店をみたらすぐ帰ってくるから。」
「分かりました。夕刻までには帰って来てくださいね。」
「うん。」
次の日の昼餉を終えた後、
早速とばかりに腰を上げて城下に降りて行く亜子の姿を見送って、雪はこっそり後をつけた。
が、城門を出てすぐの曲がり角を曲がった時、
自分と同じように亜子の後をつける影を見つけて、そっとその人影の前に回ると、対峙するように睨みつける。
「…姫様に何か御用でしょうか?」
「……ッ、」
「萩姫様の忍びとみて間違いありませんか?」
「…あんたは、」
「ふふ、ご存知でしょう?」
「………明智様の忍びとは関わるなと姫様に十分言い聞かされている。」
「なら話は早いですね。」
多くの人が行き交う城下町。
二人が睨み合っている間に亜子は、それに紛れて行ってしまった。悔しそうにチッと舌を鳴らして萩姫の忍びが姿を消すのを見送ると、雪は亜子の姿を探したが、見つけることは出来なかった。
夕刻前にひょっこり帰ってきた彼女の姿を見て、
雪がひどく安心したのはいうまでもない。