【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
翌日、早朝から開かれる軍議に参加するために、御殿を出た。久しぶりに集まる広間で、快気祝いにと政宗さんが料理を運んでくる。
たった一日顔を見ていないだけなのに、
思わずきょろきょろと亜子の姿を探してしまう自分に自分で驚いた。…思った以上に毒されてる、
「何きょろきょろしてるんだ?」
「いえ、何でもないです。」
「亜子なら、今日から針子の仕事をするって張り切っているらしいぞ。」
「…へえ、」
服を作るのが好き、
確か前そう言っていたし、初から、俺の看病をする前は部屋で静かに縫い物をして過ごしていたと聞いた。
「気になるか?」
「別に、」
にやにやと笑う秀吉さんを適当にあしらう。
軍議を終えて、廊下に出ると、まっすぐに亜子の部屋に向かった。大きな銀杏の木が見える部屋。外から声をかけると、
「はーい、」
なんてふわふわした返事が返って来て、
ふっと緩んだ顔を引き締めて部屋に一歩踏み入れた。俺の姿を見て驚いた亜子は、ガタガタと文机にあちこちぶつけながら慌てて立ち上がる。
「…家康様、」
「慌てすぎ。」
「………、」
「今日から復帰する。あんたがまた余計な心配すると思って、会いに来た。」
「…元気になって、本当に良かったです、」
「針子の仕事をするんだって?」
「…はい。信長様がお針子の仕事ができるよう、してくださって、」
「良かったね。服作るの好きって言ってたし、」
「覚えていてくださったんですか…?」
「別に…、覚えたくて覚えてたわけじゃない。」
嬉しそうに笑うその顔にどぎまぎして、
つい素っ気なく返してしまう。それでも、これだけは渡さなければ、と、持っていた包みを手渡した。
「…これは?」
「開けてみたら。」
「…っ、これ、」
「……深い意味はない。看病してくれたお礼。」
呉服屋で見つけた、鮮やかな梔色の反物。
「これで着物でも作りなよ。」
服を作るのが好きだ、と聞いてから用意してたもの。
弓術の稽古の褒美にとあげたあの耳飾りと一緒に用意してたけど、理由がなくて渡せなかった。