【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
〔 家康目線 〕
「何しに来た。」
「家康のお見舞いに、と思って。」
「頼んでない、帰れ。」
「…あの子はいいのに、私は見舞うのもダメなの?」
夕刻。御殿に押し入って来た萩姫は、
止める女中たちを振り切って部屋に来た。秀吉さんに忠告されていたから来るのはわかってた。まさか追い返されたその日に来るとは思わなかったけど。
部屋には絶対入れるな、
という俺を無視してここまで来たくせに、しおらしい態度をとる萩姫に虫唾が走る。
それに、
「織田家ゆかりの姫様…、噂どおりとてもお綺麗ね。」
「……。」
「…お見舞いに来るくらいだもの。もしかしてあの子、家康のこと好きなんじゃないかな?」
「…あの子は見舞いに来たわけじゃない。」
「じゃあ、何しに来たの?」
ほんの少ししか会ってないはずの亜子のこと。
すでに敵対視しているのか、ただ単に気に入らないのか知らないけど、
詮索するような瞳に吐き気までして来た。
「お前には関係ない。帰れ。」
そういうと、まあいいよ、なんてあっさり詮索を辞めたけど、萩姫は一向に部屋から出てはいかなかった。
しまいには、お父様にここでお世話になるように言われてる、と言い出して、それが嘘か本当か分からないけど、仕方がないから
1日だけ、
と御殿の俺の部屋から一番離れた所に泊めることにした。
次の日も、
何だかんだと理由をつけて居座る萩姫。
「私が看病して、」
「要らない。もう怪我は治った。帰れ。」
「…遠慮しないで、ね。」
1日だけと許可したのが間違いだった。
ちょろちょろと、俺の周りをうろつき、余計なことまで手伝おうとするから、本当に腹がたつ。
亜子の看病はこんなんじゃなかった。
数日間だけったけど、俺がして欲しいことを一番に聞いて、言われたこと、必要なことだけをやる。薬を運んで来たり、部屋の空気を入れ替えたり、自分じゃ不適切だと思う世話は女中にきちんと頼んでいた。
無意識に頭の中で萩姫と亜子を比べてしまう。