【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
「…信玄様、亜子さんにあったんですか?」
ある調査を終えて安土城で潜伏しているあいだの居城に帰ると、にやりと笑う信玄様が俺を待ち構えていた。
…まずい、
この人は勘がいい。
女性がらみのことになると、特に、だ。
「ああ、甘味屋で偶然声をかけた子がそうだった。明日の昼過ぎにまた会う約束をしているよ、佐助と一緒に、な。」
その表情から心理はよめないけど、
次の言葉で俺の体が凍りつく。
「…噂通り麗しいな、織田家のゆかりの姫は。」
…亜子さんからそう名乗ることは無いだろう。
何からそう断言したのか分からないけど、この人の勘はやっぱり鋭い。
「まさか、佐助と知り合いとはなあ。」
「………信玄様、」
「安心しろ。謙信には言わないし、あの子を攫ったりはしない。まあ、あの子が望むなら話は別だがな。」
「………、」
信玄様の心理はやっぱり読めない。
亜子さんが安土城から消えたこの間、一体何があったか知らないけど、明日は聞けそうにないな。そう思いながら、彼女の顔を思い浮かべた。