【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
すると向こうから背の高い男の人がこちらに向かって歩いて来た。その人は私に向かって微笑む。
「…いやあ、今日はいい日だ。」
「え?」
独り言のように聞こえるけど、
その人の目は私を捉えて離さない。確実に私に話しかけているんだけど、どう返していいか分からなくて戸惑ってしまう。
…それに、この人の顔、何処かで見たこと、
ある?
「最後にここに寄って良かったよ。君みたいな美しい子に会えるとは思わなかった。」
「…えっと、」
「もう行ってしまうのかな?出会った記念にお茶でもご馳走させてくれないか?」
するりと手を取られて思わず後ずさりする。
見覚えがある気がするけど、出会った記念、とそう言われて気のせいだったのかと思い直す。
…新手のナンパだ。
現代でもされたことないのに、この時代でこんなナンパをされるとは思わなかった。口からスルスルと紡ぎ出される言葉は、この人が言うから様になっているんだろうな…。
言い表せない大人の色気を放つその人に、どうしたらいいのか分からなくて固まっていると、
「こんなところで女なんか引っ掛けないで下さい!」
そう行って通りの向こうから男の人がかけてくる。
その人は私の顔を見ると怪訝そうに眉を寄せて、こう言った。
「お前、あの時の、」
「なんだ?幸、こんな美人の知り合いがいたのか?」
「違いますよ。ほら、あの時崖に飛び込もうとしてた女ですよ。」
その言葉にハッとする。