【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第9章 舛花色 - masuhanairo -
それでも、威勢よく反論をしていたが、
言い返す言葉もなくなったのか、萩姫はスゴスゴと広間をあとにした。
慌ててそれを追いかけた秀吉は、萩姫に睨まれながら廊下を歩く。
「…こうなるから、来たくなかったのよ。」
「それでもだ。信長様に挨拶に伺わないのは礼儀がなってない。いくら破談の相手でもな。」
「…あんな人にどう思われようがどうでもいいわよ。私がよく思われたいのは家康だけだから。」
「はあ、お前なあ、」
「御殿へ行くわ。無理矢理にでも彼処に留めてもらう。…そういえば、さっき貴方と一緒にいた方々は?
あの噂の女は何故彼処にいたの?
恋文には返事を書かずに家康の見舞いには行くの?
…まさか、恋人だとは言わないわよね?」
「…萩姫、二人がどんな関係だろうとお前には関係のないことだろう。家康とお前がなんの関係もないように…、」
「関係あるわよ。…私の家康よ。他の女は近づけさせない。」
「…っ、」
キッと睨みつける萩姫の瞳の奥に眠る色に、
秀吉は一瞬ひるんだ。
まるで、狐でも取り付いたみたいだ。
何故、こんなにも萩姫が“家康”に執着し始めたのか。
秀吉はそれを知っていた。
それでも、今まではここまでじゃなかったんだ。
家康と亜子が思い合っていること、側から見たら一目瞭然だが、萩姫はまだそれを知らないはず。女の勘とやらで何かを察しているのか分からないが、
コイツを亜子に近づけてはならない、
と秀吉は本能的に感じた。