【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
萩姫は、
ある時から急に俺の正室になりたいと、
会えば毎日言うようになった。
信長様の側室の話が舞い込んで来ても、それを蹴って、俺の正室になりたいと。それまでは、あいつの事をそこまで嫌っては無かったけど、正室になりたいと言い出してから、
忍を使ったり、
女中に探らせたり、
俺に女の影があるか念入りに調べるようになり、それでも俺の前ではお淑やかで可憐な姫を演じる萩姫に嫌気がさした。
ここ数年、お沙汰が無いから、
諦めたのだと油断していた。
「…亜子は、今日城に返してください。」
萩姫を亜子に近づけるわけにはいかない。
「…もうここで預かる理由もありませんよね。」
本当は手元に置いておきたいけど、今はそんな事言っている場合じゃ無い。
亜子を襲った浪人も今は牢の中だ。
ここに亜子を置いておく理由もなくなった。
眉を寄せて、そういうと、三成が部屋に戻って来て、
「信長様からの言付けがそれです。
亜子様を家康様の復帰と同時に安土城に戻せ、
と。少し予定が早まっても問題はないでしょう。」
そう答えた。
どっちにしろ、
あと二日しかここでは一緒に過ごせなかったんだ。
「それなら丁度いい。
少しだけ、萩姫を見張っててください。
亜子に話をしたら、すぐ城へ戻します。」
少し早まろうが同じこと。
さっき部屋に戻したばかりで申し訳ないけど、また亜子を部屋に呼び寄せた。俺が話をしている間に、女中に荷物を整理するように言う。