【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
〔 家康目線 〕
「どうするつもりだ?」
「…どうするって、別に、何も。」
萩姫について話をした後、
まだ困惑しているようだな、そう言って、秀吉さんは三成に亜子を部屋まで送るように言った。
二人が出ていくのを見送って、
くるりと俺の方を向き直した秀吉さんに、
やっぱりな、
と思う自分がいた。
「…お前、亜子のこと、」
「……言うなら名前に一番に言います。」
「それは答えてるのと同じだ。」
お人好しで女たらしの秀吉さんのことだ。
もうだいぶん前から気づかれているのは知っていたけど、こうも直球に聞かれるとは思わなかった。
…きっと、俺のこの気持ちに気付いていないのは、三成と亜子本人だけだろう。それをも、この人は気付いて部屋から出したに違いない。
「亜子の気持ちも気付いているんだろう?」
「…うっすら、とは、」
「…はあ、萩姫に知れたら厄介だぞ。」
「分かってます。」
そんなの、俺が一番よく知ってる。
「…手紙のこともだ。まさかあいつの兄が恋文を送って来ているとは知らなかった。」
「………返事はかかせませんよ。」
「書かせた方が良いに決まってるだろう?姫としてなってないとまで言われたんだ。…本物の姫じゃないとはいえ、」
「…無理です。俺が嫌なんで。」
はっきりと断る俺を見て、
開き直ったな、なんてまたため息をつく秀吉さん。
この人は人のお節介を焼きすぎて早死にしてしまうんじゃないか、たまにそう思うことがある。心配してくれるのは有難い。でも…、
「萩姫のことは自分でなんとかします。」
「…そんな身体でか?」
「もう動けます。明後日には復帰する予定です。」
「…明日も来るぞ、萩姫はきっと、」