【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
「…あいつは俺にじゃなく、徳川家の正室の座に執着してるだけです。」
「それなら何故、信長様の側室の座を断った?」
「“側室”だから、ですよ。」
「…俺や政宗でなくお前の正室に拘る理由は?」
「二人が女たらしだからじゃないですか?」
拒絶するように淡々と告げる家康様。
その様子に呆れ返っている秀吉さんは、
「…お前が避けてばかりいるから、あいつは諦めきれないんだよ。」
「変に優しく言うと、期待するでしょ。」
「少しでも優しさを見せてやれ。そうしたらああいう女はすぐに引いていく。」
「…無理な相談ですね、」
深くため息をついて、この話を終わらせた。
萩姫様…、
信長様の側室の話があったこととか、そんなことどうでもよくて、私の頭の中には、家康様に執着するほど恋い慕っている、という事実だけが残る。
嫌い、と家康様ははっきり口にしたけど、
私は二人の仲をよく知らない。
…気になる。
すごく気になるけど、
それを聞く勇気も私にはなかった。
私は家康様の恋人でも、何でもない。
他の人よりよくして頂いているかもしれないけど、私は、ただの居候だ。
そんなことを考えていたから、
恋文のことも、すっかりと忘れてしまっていて。
家康様が私を見つめていることも、
そんな私たちを秀吉さんと三成くんが見ていることも
全く気づかなかった。